鹿の舟のいま

鹿の角きり

 

奈良の秋の風物詩のひとつである「鹿の角きり」

 

江戸時代から続く鹿の角切りは、当時鹿の管理をしていた興福寺が

奈良奉行の要請を受けて行ったのが始まりとされています。

 

当時は町家の格子越しや屋根から観賞できるほど、町の所々で行われていましたが、

明治の中頃には春日大社の参道で行われるようになり、

昭和に入ると、春日大社参道の横にある鹿苑角きり場で開催され現在まで続きます。

 

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秋の雄鹿は発情期に入ると気が荒くなり人を襲う危険があります。

 

雄鹿の角は春先に自然に抜け落ち、また新しく生え変わるのが特徴です。

 

その角には血液が巡り、短い毛の生えた表皮に覆われ夏頃までのび続け成長します。

 

秋には角の成長が止まるため、血流も止まり、

角を覆う表皮が剥がれて白く硬い角になっています。

 

鹿の角には神経が通っていないため、切られても痛みはないようです。

 

仲間の鹿や人間を傷つけないよう、人と鹿が共に暮らす奈良ならではの

行事として今日まで伝わります。

 

勢子(せこ)と呼ばれる方々が、鹿を追い込み角に縄をかけて捕まえ、

神官が角を切り落とし、角を神前にお供えします。

 

必死で逃げ回る鹿、追いかける勢子。

 

勢子の掛け声が鹿苑に響き、鹿苑内に緊張感が伝わります。

 

毎年多くの人が一目見ようといらっしゃいます。

 

奈良の歴史と密接な鹿たち。

 

奈良時代、平城京を守るために茨城県の鹿島神宮から、

神様である武甕槌命様(たけみかづちのみことさま)を御蓋山(みかさやま)の山頂

「浮雲峰(うきぐものみね)」にお迎えした際、

武甕槌命様は白鹿の背中に乗り、たくさんの鹿とともにお越しになりました。

 

そのため、奈良では鹿が神様の使い「神鹿」として大切にされ、

現在は国の天然記念物「奈良のシカ」として指定され大切に保管されています。

 

また、「浮雲峰」は神聖な場所のため、現在も禁足地として入山が制限されています。

 

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奈良公園の鹿は野生のニホンジカですので、

今の時期は夏毛に包まれ、茶褐色に鹿の子模様の白い斑点があります。

 

これから冬毛に換毛していくと、斑点はなくなり発情期の雄は首の周りに

たてがみが生えてきますので、換毛の変化もお楽しみ頂ければと思います。

 

(この時期の雄鹿は気性が荒くとても危険ですので、

絶対に近寄らず遠くから観察してください。)

 

秋の鹿たちに会いに、奈良公園や角きりを見に出かけてみてはいかがでしょうか。

 

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