鹿の舟のいま

奈良晒

奈良晒.JPG

 

 

麻皮を紡いだ糸で手織りをした布を真白く晒した「奈良晒」。

 

奈良町を歩いていると、麻の織物を扱ったお店が多く見られます。

これは、奈良が江戸時代まで麻布の産地として全国的に知られていたことが

深く関係しています。

 

麻織物は、鎌倉初期には南都寺院の袈裟(けさ)と呼ばれる衣類を作るために

織られていた記録が残っています。

 

江戸時代に入ると、徳川家康の保護統制策により

上質な織りの奈良晒は「南都改」の朱印が押され、売買が認められました。

 

幕府の御用達品となったことで全国に知名度が広がり、

奈良晒業は大きく発展しました。

 

男子正装のための和服である裃(かみしも)や

夏の衣料である単物(ひとえもの)として用いられました。

 

 

「麻の最上は南都なり 近国よりその品種々出ずれども

染めて色よく 着て身にまとわず 汗をはじく故に

世に奈良晒とて重宝 するなり」

 

「日本山海名物図会」では、奈良晒が高く評価されています。

 

 

明治維新以降、着物から洋服へと人々の衣服が変わっていくなかで、

麻織物に綿織物(大和木綿・大和絣)の技法を合わせ、

蚊帳織物を生産するようになりました。

 

昔は夏の夜は、布団の周りに蚊帳を張るのが日常であったため、

蚊帳は奈良の地場産業として大きく発展しました。

 

「観光案内所 繭」は、蚊帳生地を製造していた勝村商店の分家として

建てられてました。

建物から感じる当時の大工さんの丁寧な手仕事や立派な佇まいから、

当時の勝村商店が蚊帳で栄えていたことを物語っています。

 

当時に想いを馳せ、繭の読書室では、机の周りを蚊帳で囲っています。

蚊帳を通して見る窓の外の景色は柔らかく映り、

他の空間と優しく隔ててくれることでゆったりと読書を楽しめます。

 

読書室 蚊帳.JPG

 

人々の生活様式の変化に合わせ、今では蚊帳を吊るした風景を見ることは

ほぼなくなりましたが、蚊帳生地はふきんや手ぬぐいなどに加工され、

奈良のお土産物として多くの方が手に取られます。

 

 

[鹿の舟]でも蚊帳生地を用いたふきんや古代麻の手ぬぐいを販売しております。

ふきんは蚊帳生地を重ねて縫製されているため吸水性が良く、

使い込むほどに柔らかく手になじみます。

手紡の糸で丁寧に織りあげられた上質な手ぬぐいは、

さらりとした優しい肌触りです。

 

古代麻手ぬぐい.JPG

 

奈良晒は、時代を経るごとに用途を変え、多くの方に愛され続けている奈良の伝統産業です。

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