鹿の舟のいま

柑橘のはじまり、奈良

本格的な冬到来で、あたたかさから離れがたい日々が続きます。
冷たい風が吹く一日は、こたつの中でゆっくりしていたい。
そして、そのこたつの上には、ぬくもりのある色のみかんがそっと置いてある。
なんとも冬らしい風景ですね。

この時期に、街中を歩いていると、みかんをよく見かけます。
甘く、皮が柔らかいので、手軽に食べられるみかんは、旬の時期を迎えています。

DSC00739.JPG


一口に柑橘類と言っても、その種類は本当に沢山あります。
これら爽やかな甘さが特徴の果実の始まりが、
実は奈良にあったということをご存じでしょうか。


時は、日本書紀の時代まで遡ります。
第十一代天皇である、垂仁(すいにん)天皇は、
田道間守(たじまもり)を使者として、不老長寿の秘薬を探すよう命じます。

それから彼は、海を渡り、
長い年月をかけ「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)」という実を見つけ出し、
日本へ戻りますが、その時既に天皇はご逝去されていました。

その後、田道間守は、この出来事の悲しみのあまり、
最期を迎えることとなってしまいます。

このとき田道間守が持ち帰った非時香菓が、橘と言われています。

時が経過し、田道間守が持ち帰った非時香菓は、
以降、奈良の中で蒔かれ、大切にされています。


さて、今私たちが食べている柑橘の果実は、ビタミン類など栄養豊富なうえ、
香りも心身を整えるのに良いとされ、現代生活でも広く取り入れられています。
薬効があるとして、古代の日本にもたらされたこともうなずけます。

食堂 竈」にも、みかんを入荷しております。

DSC00700.JPG


こちらのみかんは、桜井市にある「森岡祥章観光果樹園」よりお届けいただいています。
三輪山の山すその古代道「山の辺の道」に位置するこちらでは、
毎年10月1日から11月30日まで(※今年は終了)、みかん狩りも楽しめます。

DSC00756.JPG


DSC00751.JPG


お伺いした日は、金柑などの様々な柑橘類の作業をされており、
温かな柑橘の色と、爽やかな香りに包まれていました。

「幼い頃に食べていた、この味でないと」と
代々愛される、こちらの「山の辺みかん」は、
甘み・酸味・コクのバランスが良いことが最大の特徴だそうです。

山の辺みかんをより知ってもらえるよう、
農業の知識を磨かれているはもちろんのこと、
その土地がどんな場所なのかといったことまで、熱心に学ばれていらっしゃる森岡さん。
農園のある、穴師の地の歴史についても教えてくださいました。

穴師にはかつて、先程ご紹介した、垂仁天皇の都があったそうです。
そのため、田道間守がもたらした非時香菓の苗をこの地で栽培し、
現在まで大切に伝え続けられてきたそうです。

農園から少し歩いた先にある「穴師坐兵主神社(あなしにいますひょうずじんじゃ)」で、
田道間守を神様として祀っておられると伺い、訪ねました。

穴師坐兵主神社は、
非常に歴史が古く、最高の格式の神社です。
創建は、第十代天皇の崇神(すじん)天皇の時代、倭姫命(やまとひめのみこと)が、
天皇の御膳の守護神をお祀りしたことが始まりです。

DSC00761.JPG


橘神社は、ご本殿から向かって右手奥に進んだ先にお祀りされおり、
発祥の地である穴師から、
日本中で、美味しく、栄養ある果実として愛されている柑橘を
一心に見守って下さっているように感じます。

DSC00766.JPG

※当エリアでの撮影許可を頂き、撮影しております。

宮司様の御厚意により、貴重な橘もお見せいただきました。
みかんの果実より小ぶりの実が、とても可愛らしいです。

DSC00774.JPG


穴師では、発祥の地としての誇りを持たれ、
それを守り続けていらっしゃる皆さまの熱意を、感じることができました。

森岡さんのみかんを扱う「食堂 竈」は、
12/26(水)から年末年始のお休みを頂き、1/2(水)より営業いたします。


太古からの想いを馳せながら、
あたたかみのあるその味を、
ぜひこの冬、味わってみてくださいね。

鹿の舟ページへ戻る

日本語   |   English