生活学校のお知らせ

第一回講座 「たべる」 ありがとうございました

4月18日(月)・19日(火)の2日間にわたり、[鹿の舟]生活学校 第一回講座「たべる」を開催しました。

1日目にはフードディレクターの野村友里さんを講師にお迎えし、
1部では映画「eatrip」の鑑賞会・トークセッション、2部では奈良の生産者さんとともに食卓を囲む夕食会を開催しました。
約7時間にわたり、「たべる」ということに、じっくりと耳を傾ける濃厚な1日となりました。


映画鑑賞後のトークセッションでは、石村由起子が聞き手となり、
これまでの活動や、食の仕事に対する考えなど、お話していただきました。

独立され、本の出版依頼が多く寄せられる中、自分らしく食への思いを表現する形として、
友里さんは「映画」という方法を選ばれました。
その後、「chez Panisse(シェパニース)」での経験を経て、
「restaurant eatrip」をオープン、「Nomadic Kitchen」の結成など、
語り合い同じ考えを持つ仲間を増やしながら、活動を続けてこられました。

誰にとっても「食」は生まれたときからずっとそばにあるものだから、
それぞれが「食」について自分の言葉で語ることはできる。
では、食を生業とする友里さんは、どんな言葉で伝えるのか...。

例えばお店を持つと、農家さんを見つけて契約し、継続的に生産物を買うことができる。
これはすごく大きなことであり、社会を変えることにもつながる。
正しいところから仕入れ、継続して買う、そこを意識しないと何も変わらないということ。
それをいろんな場面で伝えること、行動と継続が何よりも大切であると力強く話されました。

食を生業とする生き方を模索されてきた友里さん。
講座の冒頭で「枠にはまらない幅広い活動をされている」とご紹介しましたが、
ご自身としては、「枠」や「幅広さ」を意識することはないとのこと。
変わらない根本の部分をどのような形で伝えるか、そこでいろんな形を模索されているからこそ、
たくさんの人の心に届き、社会に還元されるメッセージになっていくのだと感じました。

参加された方からもたくさんの質問が飛び交い、ひとつひとつ言葉を選びながら、真摯にお答えくださいました。
何よりも、自分が元気であることが大事!
働く楽しさ、人に料理をつくる喜びについて語られる友里さんから、溢れるパワーをいただいた時間でした。


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第2部の「奈良を味わう夕食会」では、奈良で活躍される生産者さん、
奈良の食材と生産者を紹介する情報誌「奈良食べる通信」のお二人をお迎えして、
それぞれの生産過程のお話など伺いながら、実際に育てられた食材をいただきました。

お越しいただいたのは、大和肉鶏「雅chick farm」の中家雅人さん、
原木椎茸「新鮮しいたけおかもと」の岡本隆志さん、無農薬野菜「グリーンワーム21」の柏木英俊さん。

大和肉鶏の力強く濃厚なスープは、春キャベツと奈良の豆・雑穀とともに。
肉厚な原木椎茸はシンプルにフリットで。味のある葉野菜は、鶏ささみ肉のマリネと一緒に・・・。
食材そのものの味を生かした料理を、味わっていただきました。

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生産者の方から語られる言葉は、地にしっかり根付いた本物の言葉であり、
それを聞きながら味わう食材の味は、それ自体の美味しさを超え、まさに五感で味わう美味しさだったように思います。

お酒も入って賑やかな雰囲気の中、1日目が終了しました。



2日目には、友里さんのお母様である野村紘子さんを講師にお招きし、
著書「消えないレセピ 娘に継ぐ味と心」を教本として、さまざまな実習を盛り込みながら、
食の心、もてなしの心についてお話いただきました。

事前にお香を焚きしめておき、その残り香でお迎えする。
小さなお菓子と香煎をお出しして、「ようこそ」の気持ちを伝え、一息ついていただく・・・。
参加者の皆さんをお迎えする、というところから講義が始まりました。

お香を焚くのは、生活臭を消し、空気を清めた状態でお客さまをお迎えするため。
汲み出しとは・・・。香煎とは...。
普段聞きなれない言葉や新鮮な知識の数々に、皆さんメモを取る手が止まらない様子でした。

おもてなしとは、相手への思いをいろんな形で伝えることであり、精神的なつながり、やり取りであり、
もてなす側も受ける側も楽しい、喜びを分かち合うもの。
世間一般の「おもてなし」というと、少し格式ばったようなイメージがあるけれども、
本来のおもてなしは、日々の中でいろんな形で実践できるもの。
それによって、人の輪がどんどん広がって良いご縁ができる、縁がつながって円になっていくもの。
紘子さんのお言葉を聞いていると、今見ている景色がとたんにぱっと鮮やかになるような、
これからの生活がとても楽しみになるような、そんな力に溢れていました。


花を生ける実習では、皆さんそれぞれに小さな器や花器を手に取っていただき、
実際にお庭に出て、思い思いにお花を摘み、生けていただきました。
それぞれ同じ庭から選んできたとは思えないほど、どれも違っていて愛らしく、自然に楽しい撮影会となりました。
きちんとした花器である必要はなく、手元にあるティーカップでもほかの器でも大丈夫。
ある器を使って、お花を楽しむ習慣が大切だとお聞かせいただきました。

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その後は、縁高のお弁当箱に、5月のおかずを詰める実習へ。
まずは、もともとお箸袋であった廃材を折り紙として活用し、端午の節句に合わせて兜の箸置きを折りました。
物相(もっそう)を使って、えんどう豆ご飯の型を抜く作業には皆さん興味津々。
どのように詰めればバランスよく美しく収まるか、それぞれ紘子さんから教えていただきながら、楽しく作業が進みました。

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日本の文化は、少ないものを生かす文化。
日々の暮らしの中にあるもので、季節感、お迎えする心を表現するということ。
紘子さんが語られる言葉はどこを切り取っても美しく、すべてをメモして記憶しておきたくなるようなものでした。

最後には、参加されたお一人お一人から、講座の感想や思いを語っていただき、
今日偶然に同じ場に集ったご縁を感じるような、温かい時間となりました。

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2日間を経て、参加された方にはきっといろんな思いが芽生えられたことと思います。
今回の学びにより、日々の「たべる」がより彩られ、素敵なものになれば・・・という思いです。
参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。

次回以降の生活学校も、ぜひお楽しみに!

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