鹿の舟のいま

龍田の花火

まだまだ梅雨のさなか、本日もしとしとと雨模様です。
晴れ間が恋しくなりますが、庭の植物も雨を浴びて生き生きとしています。

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梅雨が明ければ、もう夏本番です。


"夏"と言えば、何を思い浮かべますか。

たとえば、夏の音風景でもお伝えした、花火。

手持ち花火を楽しんだり、夏祭りで打ち上がる大輪の花火を眺めたり。
奈良県内でも、これから各地で花火大会の開催を控えています。

そんな夏の訪れを感じる風物詩の一つでもある花火ですが、
奈良に、花火を用いた神事があるのをご存じでしょうか。

[鹿の舟]からの交通の便も良く、JR線で奈良から大阪方面に向かう途中にある三郷駅。
そこからほど近い「龍田大社」の「風鎮大祭」では、神様へ花火が奉納されます。

「龍田大社」は、約2100年前、崇神天皇(すじんてんのう)の御代に、
凶作や疫病を鎮めるため創建され、悪い気を払ってくださる
風の神様、始まりの神様をお祀りしています。

この「風鎮大祭」は、龍田大社の中でも重要な祭りの一つでもあり、
台風や洪水、凶作や疫病を防ぐ、風鎮めの意味が込められています。

日本書紀によると、675年にはすでに行われていたといわれる由緒ある祭事です。

毎年7月の第1日曜日に行われ、今年は七夕の節句と重なりました。

祭事の1週間前から前日にかけては、御饌祭(みけさい)として食事をお供えし、
結願日である祭事当日には、朝から神事が執り行われ、日中から夜にかけて、
居合剱詩舞道・神楽・風神太鼓・河内音頭が奉納されます。

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次第に宵闇に包まれる境内で、軽快な音頭に合わせ、楽しそうに民踊する人々。

そして、祭事の締めくくりとして、
火のごちそうである「風神花火」を、神様にお供えします。

火を扱う祭事は奈良でも時折見かけますが、
花火を用いる神事は、少し珍しく感じる方もいるのではないでしょうか。

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手持ちの手筒花火が、天に向かって大きな火柱を上げます。

男性は上半身裸になり、両手を大きく広げ花火を構え、
女性は白装束に身を包み、花火を奉納します。

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また、手筒花火の後には、仕掛け花火が滝のように流れ、
宮司によって印が結ばれると「風神花火」の奉納は終了となります。

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「神」の語源は、「風」を表しているのだそうです。

龍田大社の花火には、風の持つ力を信じてきた人々の思いが、
今も息づいているのでしょう。

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