鹿の舟のいま

山の辺の道 鹿野園~八島

暦の上では大暑を迎え、
長い梅雨が明けると、いよいよ本格的な夏の到来です。

さて、前回、「鹿の舟のいま」でご紹介した「山の辺の道」。

今回も、散策気分を楽しめるように、続きをご紹介いたします。

(前回のご案内記事はこちら、、奈良市街~高円 編
、、、、、、、、、、、、、、、、高円~鹿野園 編


インドに縁のある地名とご紹介した「鹿野園」。

この地域から続く細道を抜けると、横井廃寺跡の辺りに続きます。

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木が茂り、今となっては横井寺の面影はありませんが、
この寺院は、飛鳥時代に中臣鎌足の従弟である中臣国足が創建した
藤原寺(中臣寺)ではないかとも言われており、歴史ある場所のようです。

住宅街の脇の細道を進むと、小川のせせらぎを聞きながら、
家々のすぐそばとは思えないほどの緑に包まれる、穏やかな道が続きます。

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竹林、紫陽花、紅葉、南天・・・
この短い小道から、植物の移ろいを通して季節を感じることができます。


この道を抜けると、景色は一変。
ぱっと空が開け、目の前に田んぼが広がります。

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山の辺の道は、田んぼの間を抜けて続いています。

散策しやすいように、田んぼの脇には案内板も立てられているため、
迷うこともありません。

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田んぼに張られた水に映る空はきれいで、
天気の良い日に散策するのも気持ちが良いものです。

この田んぼを抜けると、東には農村の家並み、西には棚田が広がる、
どこか懐かしい昔ながらの風景へと道は続きます。

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山の辺の道は山すそを通るため、景色が開けている場所からは、
遠く奈良盆地や生駒山を眺めることができ、
夕方には、田んぼの水が夕日の色に染まり、何とも言えない情景を生みます。

少し進んだ先、道沿いにある「白山比咩(ひめ)神社」は、
江戸時代にはこの場所に鎮座していたとされ、菊理比咩命をお祀りしています。

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小さな神社で、はっきりとした由来は分かっていませんが、
きれいに手入れがされており、地域の方々に大切に守られていることが伝わってきます。


そこから道なりに西に向かうと、「嶋田神社」があり、
その少し先には「崇道(すどう)天皇陵」が続きます。

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「嶋田神社」はかつて、今の崇道天皇陵のある場所に、
崇道天皇社という神社と並んでお祀りされていましたが、
明治時代、崇道天皇陵を整備する際に、現在の場所へと移設されました。

そしてこの時、嶋田神社は崇道天皇社と合祀されました。

神社の祭神に崇道天皇がお祀りされていることや、
かつて崇道天皇社の本殿として活用していた建物を
こちらの神社に移築していることからも、その関係性が感じられます。

また、嶋田神社の現在の本殿は、300年以上前に春日大社の本殿として
建てられ、鎮座していたものになります。

春日大社では20年に一度、式年造替が行われ、
そこで本殿の立て替えをしていますが、
その際に払い下げた旧本殿の一つが、かつての崇道天皇社へ、
そして、現在の嶋田神社へと巡ってきました。

小さな神社ですが、趣深い歴史が詰まっています。


「崇道天皇陵(八島陵)」は、早良(さわら)親王の陵墓です。

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早良親王は、歴代天皇ではないのですが、「天皇」と呼ばれています。

無実の罪で淡路島に流されることになりましたが、
配流の道中でお亡くなりになり、
その魂を鎮めるために、「崇道天皇」と追称され、
お祀りされています。

また、この陵墓の前を通る道路の中央には、
大きな石が道を塞ぐようにして存在しています。

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こちらは、「八つ石」と呼ばれ、ここ「八島町」の町名の由来になった巨石でもあります。

お亡くなりになった早良親王が、"九つ"の巨石を投じたとされ、
そのうち"八つ"の石が、この場所から見つかったことから、
その石をお祀りし、また、町名というかたちで残りました。

実際には、親王が亡くなる前からあったとされる古い巨石のため、
この言い伝えの真相は分かりませんが、
親王の想いがこのようなかたちで現在まで伝わってきたことも、
奈良の歴史の面白さの一つではないかと思います。

因みに、早良親王は奈良町でも身近な存在で、
[鹿の舟]から、東に徒歩2,3分の西紀寺町にある「崇道天皇社」や、
北に徒歩3,4分の場所に位置する「御霊神社」でも
祭神としてお祀りされているため、
山の辺の道の散策と、これらの神社への参拝を組み合わせ、
歴史を辿るのも、良いかもしれません。


ひとたび山の辺の道を巡れば、
のどかな風景と共に、悠久の歴史が感じられ、
桜井方面まで続く道を、更に歩みを進めると、
他にも歴史ある寺社仏閣や懐かしさの感じられる景色が続きます。

少しずつ、この先に続く道もご紹介いたしますので、
楽しみにお待ちいただけましたら幸いです。

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