柳生街道 滝坂の道
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柳生街道は春日山と高円山の谷あいを通る道です。
柳生街道の名は江戸時代の兵法家・柳生一族が暮らした剣豪の里
にちなみますが、もとより古道で平安時代からは山岳信仰の道場でした。
この道は修験者、剣豪、里に暮らす人々が日々の暮らしのなかでたどっ
た道筋になります。
滝坂の道とは柳生街道の中では前半の奈良市外地から柳生の里までの道
を指します。奈良市街地から春日大社の南側の山道に入ると街道は静寂
に包まれます。
しかし、耳をすませば木々を揺らす風の音、川を流れる
水のせせらぎ、小鳥のさえずりが聞こえてくるでしょう。
歩むほどに1000年以上伐採が禁じられていた神域・春日山原生林の世界を
体感できるかもしれません。
山道を進むと寝仏、夕日観音、朝日観音など苔むす素朴な石仏が出迎えて
くれます。この街道に多くの石仏が残されているのは山岳信仰の名残で、
古くは鎌倉時代に彫られたと言われています。
深い森の中で見られる石仏や石窟仏は神秘的で見事。
思わず手を合わせたくなります。
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木漏れ日に照らされる山道をあがると石切峠に至り、峠の茶屋が現れます。
この茶屋は江戸時代から続く茶屋で、かつて往来する人々が置いて行った
酒代の代わりの茶瓶なども残されています。
軒先に腰を下ろしてたたずむと、眼下に街の景色が広がります。
峠の茶屋を過ぎると街道はいよいよ狭隘な山道に。
一人で歩くよりは仲間と進むことをおすすめしますが、この先の柳生の里が
近付くと土地が開け、明るく安穏な田畑風景が広がります。
滝坂の道は柳生の里で日常を送る人々の主要な道でした。
まだ自動車が普及していなかった頃、里の人々は重い荷物を担ぎ、
街道を往来して生活必需品を運搬していました。
里の人々には欠かせない大切な道だったのです。
円成寺は滝坂の道のゴールにあたる寺院です。
創建については諸説ありますが、天平勝宝8(756)年が開山と伝わる古刹
です。平安時代末期に造営された庭園は浄土式庭園といわれ、楼門前の景色
を格別美しくしています。
重要文化財の阿弥陀如来坐像、十一面観音像を有する他、
国宝の大日如来坐像は若き日の運慶の作。
柳生街道散策の際には必見のお寺です。
秋の紅葉狩りと併せて訪れてみてはいかがでしょうか。
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