鹿の舟のいま

風炉(ふろ)― 茶の湯の道具 其の四 ―

風炉(ふろ)は炭と灰を入れて火をおこし、そこに釜をかけてお湯をわかすための道具です。

茶の湯では欠かすことができない存在です。

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鎌倉初期に中国から仏具とともに渡ってきたのが起源と言われています。


わび茶の発展にともなって、風炉には様々な素材や形状のものがあり、

大きく分けると銅・鉛・錫で鋳造した「唐銅風炉(からかねぶろ)」、
素焼きの陶器を磨いたり、漆を塗った「土風炉(どぶろ)」、
鉄製の「鉄風炉(てつぶろ)」などがあります。

土風炉は奈良に縁があり、わび茶の祖と言われる村田珠光が春日大社の神器を作っていた
土器師に依頼して制作したのが始まりで、「奈良風炉」とも呼ばれるそうです。

通常は5月から10月にかけてこの「風炉」が用いられ、11月から4月には畳を切って
床下に炉壇を作り、火入れをする「炉」でお湯がわかされます。

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「風炉」は火鉢のようなもの、「炉」は囲炉裏のようなものです。

茶の湯では「風炉」と「炉」が大きく季節を分ける言葉になっており、
「風炉の季節」、「炉の季節」と呼び分けています。

炉には風炉の倍近くの炭や灰を使いますが、これは炉で客人に暖もとって頂くためです。

反対に、春から秋にかけては出来るだけ涼しく過ごして頂くために
熱をあまり感じさせない風炉が使われます。

さらに「風炉の季節」のうちでも気候の変化や茶事の趣きに応じて
風炉の種類や位置はきめ細やかに変化します。


たとえば、「風炉の季節」が終わりに近づくと、朝晩、肌寒く感じる日も増えてきます。
そのような気候では、火窓と言われる風炉の側面の開口部が大きく、
火のついた炭や灰が見えるものが好まれるようです。

さらに風炉を亭主がお点前をする点前畳の中央において、お客様のほうに
火気を近づけることもあります。
実際に暖をとるわけではありませんが、亭主のその細やかな心遣いを受け、
客人は気持ちがあたたかくなります。

一方、夏になると鉄や唐銅の風炉は熱を含むため、小さな茶室では
火気を伝えることになり、暑く感じてしまいます。

その頃には土風炉や火窓が小さいものが熱を伝えにくく、好まれるようです。

暖かい気候になるにつれ、火気はどんどん客人から遠ざかり、
お湯より水を感じる工夫がされます。

冬は空間を実際の暖かさはもとより、暖かく感じる色・素材・形・音・香などで
しつらえる工夫があり、夏は少しでも涼しく感じるしつらえが施されます。

根底には季節の移ろいを研ぎ澄まされた感覚ですくいとり、
客人へのもてなしにつなげる茶の湯のこころがあります。

それはやはりお湯をわかす道具にも込められています。

他の道具、たとえば、柄杓(ひしゃく)、茶碗、水指(みずさし)なども、
ひとつひとつ、季節に応じて異なるものが登場します。

道具と触れ合うときにその繊細な変化を感じとることができると幸いです。

5月の奈良で茶の湯を愉しむ会「特別教室」では
「炉の季節」から「風炉の季節」へ移るこの時期に、季節の道具の違いとその意味、
あつかい方・しまい方などを学びます。


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通年のお茶稽古
では、風炉のお点前の稽古に励んでいます。

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体験も受け付けておりますので、繭(0742-94-3500)までお気軽にお問合せください。

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